心の旅路

第1話「人間とは何ぞや」関連の参考講話 短編集                                                      


   3.師の謙虚な姿                更新

(『出会い』参照)

高橋先生は、
「朽木さん、組織を造ったらダメだね」
と、仰っていた。でも高橋先生の組織がありますね。ですから他の人が質問した、
「何故、組織を造られたのですか」
「私が話をすると、沢山の人が集まって来てくれる。その人、一人一人を訪ねて行って、話する訳にいかないから、人に集まって貰う処を造ったんですよ」
しかも、集まる処は全部自分の建物ですよ、六階建てのビルですね。
ところが先生の処は、人は集まっても、先ずお金が集まらないんですね。また何故か、持って来る人も少ない。(笑)人が集まれば、それだけ費用が掛かりますからね。
でも、先生は、「持って来い」とも言わない。
あちこちの宗教団体とか、そういう組織を造ったら、お金がどんどん入ってくるんですよ。沢山の信者がお金を持って来る。
そうしたら教祖とか、取り巻きの人の金儲けを手伝っているようなものですよ。
今、宗教をやってご覧なさい――。誰か、霊感のある人を祀ってやってご覧なさい――。五〇人、一〇〇人信者が集まったら、もう完全に御殿が建ちますよ。そのくらい、今の成長産業の一つなんですよ。(笑)
そしてまた、そういうものを踏み台にして、政治家になる人もいる訳ですね。
そして、「私は、そういうものとは、一切関係がありません」とは言っているけど、選挙になると、そうではなくなってしまう。
それで、お金が無いので、先生に、
「先生、お金がありませんけども……」
「そう……困ったね。誰か持ってきてくれないかなぁ」
と言っても、誰も持って来ませんね。そうしたら次の日、お金を持ってくるんです。「先生それ、どうしたんですか?」
「いや、会社からお金持って来たよ」
って仰る。先生は社長ですからね。
「これじゃ、会社おかしくなるんじゃないですか?」
「いいんだよ」
「家も困るんじゃないですか?」
「いいよ」
って仰る。それから、高橋先生は何千という特許を持ってらっしゃるんですよ。貰った特許料を、またこれ持って来る。
私は先生の本の販売の方をやっていた時に、著者である先生に対して、本の印税を
払わなければいけない訳ですね。
あゝいう真面目な本というものは中々売れないんですね。でも売れる時もありますからね、そういう時は有り難いですよ。だけど、前からの分や経費が掛かって、印税をまだ一回も払っていない。先生の部屋へお詫びに行く、断りに行くんです、
「トントン」
戸を開けたら、
「あっ、朽木さん、印税でしょう、お金無いんでしょう、要らないよっ」(笑)
「ガチャン」
戸を開けたら、頭下げて直ぐ閉める。(笑)もう全部分かってるんですよねぇ……。
そういう状態であっても、やっぱりみんなに一所懸命に話をしているんですね。
そして、何か訳の分からない人が相談に来る事もあるんですね、それも一回や二回じゃないんですけど、或る時に、ヤクザみたいな人が相談に来て、「高橋先生に会わせろ」と押し問答になった。
そうしたら、丁度そこへ先生がみえた。先生はその人といろいろ話をした後、
「あ、あなたね、今お金無いんだよね、帰りが困るでしょう。歩いていけないよね」
とポケットから、財布を出して、五千円渡しているんですねぇ。そして、
「朽木さん、ちょっとね、私の本を何冊か持って来て貰えますか」
持って行ったら、
「あなたねぇ、わたしの本も読みたいんでしょう、これも持って行きなさいよ」
――その青年は、とうとう泣き出してしまったんですね。
来た時は、まぁ、こんなになって肩をいからせて来た人が、ウワーッ!と泣き出してしまって、こっちは吃驚しましたね。――そういう事があったんですね。
他では、そんな事はしないんじゃないでしょうか。「本のお金払え」とも何も言わないんですよ。しかも、反対にお金まで付けて――。
やっぱりそういうものが、本当の、人に対しての親切だとか、優しさじゃないでしょうか。
高橋先生は絶対に、「おれは」なんて威張った事もないですよ。
1998年9月

                                                 
続きのページはPDFファイルで作成されています。
PDFファイルを見るためには、アドビリーダーというソフトが必要です。
アドビリーダーは無料で配布されています。

下記ボタンをクリックするとダウンロードができます。


当サイトの画像及びコンテンツの無断使用を禁じます。